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そのブランド米、今年も特Aでしたか?米の格付けの意味を解説します

お米を買う際になんとなく聞く「1等」や「特A」などの格付け。
「1等」や「特A」がいいんだろうなと思っていても、その詳しい意味を知った上で、米選びに生かしている消費者は少ないのではないでしょうか。


この記事では、お米の代表的な3つの格付けを詳しく紹介し、それぞれの違いや、米選びに活用する際のポイントについて整理しています。


銘柄ごとの美味しさの傾向は「食味ランキング」でざっくり把握

米の美味しさに関する格付けの中で、特に有名なものが「米の食味ランキング」です。

米の食味ランキングとは、一般社団法人日本穀物検定協会が公益事業として毎年実施している銘柄米の格付けです。全国の代表的な産地品種の米の食味試験を行い、その結果を食味ランキングとして発表しています。昭和46年産米から開始され、第48回となる平成30年産米の食味ランキングは平成31年2月27日に発表されました。

食味ランキング評価の方法とは?


日本穀物検定協会発表の資料[1]によると、平成30年度米は以下の方法で評価されました。

  • 対象銘柄の選定
道府県の奨励品種であること、作付面積が一定の基準を満たすものであること。試験に使われる米は検査等級1等で、その地域内の代表的産地で生産され、その品種の特徴が明確なものを選定。

  • 食味試験
炊飯器(Panasonic IH SR-HD103W)で炊いた米を、専門の評価員(食味評価エキスパートパネル)20名が評価する。評価項目は外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価の6項目。基準米(複数産地コシヒカリのブレンド米)との比較で-3〜+3の7段階で点をつけ、総合評価を基準米の数値と比較しランク分けをする。

  • ランク
基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、おおむね同等なものを「A'」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B'」とする。

平成30年産米はどんな結果に?


食味ランキングの結果は、日本穀物検定協会のホームページで確認することができます。

平成30年産米に関しては、合計154銘柄が試験され、うち55銘柄が特A、67銘柄がA、32銘柄がA'、B以下は該当無しという結果になりました。

特Aの選定数は過去最多、全体の3割以上が特Aランクで、一方、基準米の複数産地ブレンドコシヒカリよりも低い評価の米が無かったというのは意外です。日本の米づくり技術は平均的に高く、安定した品質を全国的に維持できているということなのかもしれません。

日本一の米はこの先も魚沼産コシヒカリなのか?


日本の米はどれもそれなりに美味しい……とはいっても、ここぞという日や贈り物には、「魚沼産」などの有名ブランド米を選ぶ方は多いと思います。しかし、現在の「最高級米といえばこれ」という常識は、近いうちに通用しなくなってしまうかもしれません。

平成29年産魚沼産コシヒカリに、事件が起きた

日本一有名なブランド米といえば、新潟県の「魚沼産コシヒカリ」です。魚沼産コシヒカリは食味評価ランキングが現在のような5段階評価になった平成元年産以来、28年連続で特Aを記録していました。ところが、平成29年産米を対象とした食味ランキングで、初めてAにランクダウンする波乱が起きたのです。

その原因はよくわかっていないのが実情と思われます。天候不順かもしれないし、単なる試料の個体差かもしれません。結局、翌年の平成30年産米では再び特Aに返り咲き、ひとまず落着となりました。

気候が変われば、栽培適地が変わる

1990年代以降、日本の気温は世界的に見ても早いペースで上昇を続けており、それは米の生育や品質に大きく影響を及ぼします。[2]米は植物ですから、品種ごとに生育に適した気候があります。これまでの栽培適地がこれからは適地ではなくなるということも、十分に起こり得るのです。

新品種も続々登場

日本で主食用に栽培されている米品種はおよそ300品種ほどある[3]といわれており、新たな品種も続々と生まれています。食味ランキングでも平成30年産米では6銘柄が新たに食味試験の対象となりました。

米の消費形態の変化や栽培環境の変化などに対応するため、冷めても美味しい品種や猛暑に耐える高温耐性品種の登場など、新たな米ブランドをつくる取り組みは各地で起きています。

食味ランキングは絶対ではない。あくまで参考に


美味しい銘柄米の最新情報を知れる食味ランキングですが、その情報の活用には注意が必要です。

「特A」「A」などの格付けの根拠となっているのは、あくまでも試験に用いた米の評価であり、販売されている米商品自体の評価ではありません。特Aの米と同銘柄でもイマイチなものや、Bランク以下や食味ランキング対象外の品種でもとびきり美味しいものがあるかもしれません。

食味ランキングはあくまでもその年の銘柄の“ざっくり”とした傾向として、参考にする程度にとどめましょう。


個々の米ごとのおいしさは「食味値」をチェック

銘柄を“ざっくり”と格付けする食味ランキングより、もっと細かい単位で美味しさを確認する方法のひとつが、「食味値」です。


食味値とは、一般に「食味計」と呼ばれる理化学機器を用いて測定された、4種の成分(アミロース、たんぱく質、水分、脂肪酸度)の含有量から算出される数値です。最高点は100点、日本産米の基準は65〜75点で、70点以上であれば「70〜80%の人が美味しいと感じる」とされています。[4]

食味値で検出する成分はどんなもの?


  • 水分
米の瑞々しさと関係する。16%以下で高水分の米が美味しいとされている。15%以上の米は低温貯蔵が必要。14%を下回ると「過乾燥米」と呼ばれ、炊飯時にべっとりとした食味の悪い米となる。

  • たんぱく質
米の吸水しやすさと関係する。たんぱく質が少ない米は吸水が良く、ふっくらとした炊きあがりとなる。日本の白米のたんぱく質含有量の平均は6.8%

  • アミロース
米の粘り具合と関係する。米のデンプンにはアミロースとアミロペクチンとの2種類があり、これらの含有比率で粘り気が変化する。一般的な白米(うるち米)の比率はアミロースが約2割で、アミロースの割合が減るほど粘り気が増えていく。食味評価の高い新潟県産コシヒカリのアミロースの割合は16〜17%くらい。

  • 脂肪酸度
米の新鮮さと関係する。脂肪酸度が低いほど新鮮な米といえる。収穫直後は10〜20%が標準とされ、時間とともに数値が上がっていく。

食味ランキングと食味値の違いは対象範囲の広さ


食味ランキングも食味値も、米の美味しさに関する指標という点では同じですが、両者の違いはその対象とする米の範囲にあります。

食味ランキングは銘柄、つまり同一産地の同一品種を総合した大きな範囲の指標であるのに対して、食味値はもっと小さな範囲の、農家以下の単位で美味しさを数値化できる指標です。

食味値の導入でより詳細な美味しさの格付けが可能に


筆者が知り合いの米農家に聞いた話では、米の味は、同じ農家、同じ品種でも、田んぼごとに、さらには田んぼの中の位置ごとにも変わるといいます。

食味値は、JAなどの大規模流通にまとめて出荷する農家には関係のないことかもしれません。しかし、より美味しい米を自分自身の手でエンドユーザーに届けようとする農家にとっては、自身の米の価値を高めるために有用な指標です。

食味値を公開している米はネット通販で見つかる


美味しい米を選びたい消費者としては、すべての米に食味値を表示してもらいたいところですが、食味値の表示が一般小売商品にまで普及するのは、すぐには難しいといえます。

なぜなら、食味値には、検査機器による数値のぶれや、本当に美味しく感じるかは食べる人の好みによって異なる[5]などの不確実性や、食味計を無料で利用できる地域もあればそうでない地域もあるという、行政サービスの地域間格差などがあるからです。

とはいえ、実際に測定結果を公開している農家は、美味しさに自信のある農家である可能性は高いといえます。最近はインターネットを使い自分で農作物を販売する農家も増え、そのための通販サービスも多数登場しています。ネット通販には、重い米を玄関先まで運んでくれるというだけではなく、優良な農家の米を指名買いできるというメリットがあるのです。


見た目のきれいさの格付け「等級」


ここまで米の美味しさに関わるふたつの格付けをみてきましたが、最後は日本で最も普及している格付けである「等級」についてご説明します。

等級とは、農作物検査法に基づき農林水産大臣の登録を受けた登録検査機関によって行われる農産物検査の中の“品位等検査”で鑑定される、主に外見による米穀の評価のことです。品位等検査には種類・銘柄・品位の3項目の鑑定があり、主食用米が含まれる「水稲うるち玄米及び水稲もち玄米」の品位は1等〜3等の等級に分けられています。[6]

等級の決められ方とは?



整粒の割合、形質、水分量の各規準により1等・2等・3等の規格にわかれ、そのどれにも適合しないものは規格外とされる。検査は農産物検査員が目視で行っている。

  • 整粒の割合
整粒とは、被害粒・死米・未熟粒・異種穀粒及び異物を除いた粒のこと。整粒の割合が70%以上で1等、55%以上が2等、45%以上が3等となる。

  • 形質
形質とは、外見上の特徴のこと。皮部の厚薄、充実度、質の硬軟、粒ぞろい、粒形、光沢並びに肌ずれ、心白及び腹白の程度により、1〜3等級それぞれの検査標準品と比較する。

  • 水分量
1〜3等すべてで15%以下と定められている。

消費者が米の等級を知ることは難しい


品位等検査で証明を受けた米は、商品外装等に原料玄米の産地・品種・産年を表示することができますが、等級については表示義務がありません。[7]自主的に表示をしている事業者がいないわけではありませんが、ほとんどの場合は消費者が購入する米の等級を知ることは難しいといえます。

※品位等検査による証明を受けていない米は、産地に関しては産地名の後に「(産地未検査)」と括弧つきでの表示が認められていますが、品種・産年は記載できません。[8]

米の等級と美味しさの関連は薄い


しかし、米の等級を知ることができないことは、消費者にとってそれほど重要なことではないともいえます。なぜなら、等級に関する検査内容には、味に直接関係する検査項目がないからです。

等級は米の見た目で付けられる格付けです。粒の歩留まりが高く見た目の良い米ほど等級が高くなり、等級が高いほど米の買い取り価格も高くなります。しかし、「〇等だから美味しい/美味しくない」ということではないのです。

※近年は選別や検査機器の精度が向上していることや、流通ルートの多様化により見た目よりも食味や農薬使用の有無を重視するニーズが増加していること等から、規格基準や検査方法等の合理化・簡素化を求める声があがっている。[9]


安心な食は、知ることからはじまる

等級、食味ランキング、食味値と、3つの米の格付けについて説明しました。

2004年の改正食糧法で米の販売が自由化[10]されて以来、消費者の米の選択肢は増える一方です。品種や産地だけでなく、栽培方法や生産農家までもたどって購入できるようになったことは喜ばしいことである反面、消費者個人がリスクを負わなくてはならないこともあります。

激化する販売競争に勝つために、販売者は「こだわり」やキャッチコピーなどを商品パッケージや商品広告等に記載することで、ほかの米との差別化を図ろうとします。それは当然の営業努力ですが、度を超すと上記の格付けと紛らわしい表現となり、消費者の誤認を招くおそれもあります。

米を一般に販売する際には、食品表示法や不当景品類及び不当表示防止法等の法律が適用されます。商品が実際より良いものと誤認させようとする有利誤認や産地品種等の食品偽装などは法律違反となり、罰則があります。しかしながら、現実には個人農家レベルではその知識を持たない販売者も多くみられますし、取り締まるにも市場に出回るすべての商品を監視することはとても難しいことです。

こうした不当な商品を減らしていくためにも、一般的な格付け制度やルールのもとに適切な商品を選べる消費者が増えることは大切なことなのです。

米の栽培は1年に1度であり、栽培期間中の環境が全く同じ年はありません。同じ銘柄でも、翌年はもっと美味しくなるかもしれませんし、その逆もあり得ます。これからも安心して美味しい米を食べ続けるために、米の産地や品種、生産者などの情報を常に最新版にアップデートしておきましょう。


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<参考URL>
[1] 1.平成30年産米の食味試験の実施[PDF]
[2] 気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018〜日本の気候変動とその影響〜,環境省 文部科学省 農林水産省 国土交通省 気象庁[PDF]
[3]お米Q&A,公益社団法人米穀安定供給確保支援機構情報部[PDF]
[4]お米豆知識食味値について,米・食味鑑定士協会
[5] 稲作改善指導要領第3章 買ってもらえる米づくりに向けたポイント,平成23年3月青森県[PDF]
[6]玄米の検査規格,農林水産省ホームページ
[7]米及び精米品質表示基準,消費者庁ホームページ[PDF]
[8] 未検査米も、都道府県名などの産地の表示ができるよう改正した概要はどのようなものですか。,玄米及び精米品質表示基準Q&A,消費者庁ホームページ
[9]農産物規格・検査の概要と 取り巻く情勢の変化等について(17ページ),農産物検査(お米)に関するアンケート(1),農林水産省ホームページ[PDF]
[10]コメ流通の歴史,全米販ホームページ

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